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概要
持続可能で効率的な、近未来型の酪農スタイルを。
私たちは放牧酪農が持つ潜在能力を高く評価しており、放牧による安全安心な生乳の国内比率を高めていくべく、効率的で持続可能な新しい酪農スタイルの確立を目指しています。現在、搾乳の自動化に対しては多くの酪農家が取り組んでいますが、放牧地の牧草管理においては未だ自動化は進んでおらず、その指標となる考え方や管理基準なども統一化されていません。よって人間の経験則や感覚値でのアナログな管理をせざるを得ない実情がありますが、広大な牧草地を持つ酪農家にとっては大変な管理業務が必要となります。当スマート酪農では、ドローン・AI・IoTなどの先進技術を取り入れたスマート酪農の基盤を構築することで、牧草の生育状況の把握、日ごとの放牧エリアの選定、乳牛の囲い込みといった酪農運営業務のシステム化を図り、効率的で安定した事業継続を可能とする新しいスマート酪農スタイルを確立してまいります。
機能
良好な牧草地をドローンとAIで選定し、圃場内の牧柵をリモートで制御。

- 最良な草地の自動選定
宇野牧場が持つ広さ160ヘクタールの広大な放牧地を区画し、ドローンが各区画の牧草を撮影。その撮影データから牧草の生育具合をAIが自動判別し、その日の最良な放牧エリアを選定します。 - 牛誘導のためのゲート遠隔制御
各放牧区画の境界線にはリモートで制御可能なゲートが設置されており、AIが放牧エリアを選定したあとは、遠隔制御によりそのエリアのゲートを開閉し、新たな放牧エリアへ牛の誘導を促します。
背景と目的
人手不足・後継者不足の酪農業界。安定した事業継続のために。

北海道は気候が良く広大な土地に恵まれており、放牧にとっては最適な地域です。しかし意外なことに、この広い土地を持つ北海道でも「放牧」を取り入れている牛飼養者は半数ほどしかなく、全国的に見れば2割以下まで落ち込みます。 一方、酪農先進国であるニュージーランドに目を向けると、酪農といえば「放牧」が基本です。国内の放牧地の合計面積は約1,300万ヘクタールにおよび、国土面積のおよそ半数を占めています。くわえて国の人口は約490万人と少ないため、国内で搾乳される生乳や乳製品の約90%を国外へ輸出しており、その輸出量は単一国としては世界第1位を誇っています。
「放牧」には「舎飼い」と違い、牛が健康で病気にかかりにくく、生産される生乳にはビタミンが豊富で高い栄養価があり、草の香りによって後味が軽やかになるとも言われています。また、運営面においても低コストや省力化といったメリットがあることから、日本では近年、農林水産省によって放牧が推進されるといった向きもあります。 しかしながら、広大な牧草地で行う放牧には、牧草の管理(生育状況の把握・草刈り)やその日の放牧エリアの区画整理といった大変な管理業務が必要であり、365日対峙しなくてはならない乳牛の管理も抱える中では多忙を極めます。また業界全体として人手不足・後継者不足も深刻です。酪農は営農類型において長時間労働の代表格であり、経験やノウハウが属人化してしまっていることが後継者不足の一因とも考えられます。 そこで当スマート酪農プロジェクトではこれらの課題に対して先進技術を取り入れ、技術者の経験やノウハウをデータ化し、AIによって判断させることで、時間短縮や作業の効率化、また機械だからこそ可能な正確性を向上させ、効率的で持続可能な酪農スタイルの確立を目指しています。
現地視察会を2020年秋に開催。メディアからも注目
牧場を開放し約60名が参加。ドローン撮影、AI解析、牛の誘導などのデモを実施。

2020年10月、北海道天塩町にて実証実験の現地視察会を開催いたしました。現地視察会は前半と後半の2部構成となっており、第1部では宇野牧場を会場とし、自動飛行によるドローンでの空撮、その空撮データをもとにした牧草の生育状況のAI判別、そしてゲート開閉による牛の誘導などのデモンストレーションをご覧いただきました。続く第2部では、場所を天塩町福祉会館へ移し、弊社代表の坪井ならびに宇野牧場代表の宇野氏より、それぞれ今回のプロジェクトの詳細やここに至る経緯、ならびに今後の展望などを説明させていただきました。
事前の受付を早めに締め切らざるを得ないほど、おかげさまで大変多くの方にお申し込みいただき、当日は60名を超える来場者の方をお迎えすることができました。また、新聞・TVなどのメディアの方にもお越しいただき、各局よりすぐにニュース報道が行われ、当スマート酪農プロジェクトへの関心の高さを伺い知ることができました。
今後の展開
2021年には農業法人設立をし、生乳業界へ進出を。
2020年5月にスタートした実証実験を同10月に完了し、2021年4月より宇野牧場と共同で農業法人を設立、生乳の販売事業に参入いたします。また、餌である牧草と搾乳される生乳の相関をデータとして蓄積していくことで、「何の餌を食べることで、どんな生乳ができるか」を分析し、その結果から成分操作が可能な餌の開発・販売・データ提供も行ってまいります。
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